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二次電池正極材料 コバルト系

概要

二次電池正極材料(コバルト系)の製造工程に用いられるホソカワの装置を紹介します。

コバルト酸リチウムLiCoO2 LCOは、リチウムイオン二次電池の正極活物質として最も代表的な材料です。
ここでは、焼成による活物質合成後の製造工程に用いられる当社技術を紹介します。
コバルト酸リチウムだけではなく、三元系のLi(NiaMnbCo1-a-b)O2 NMCやLi(NiaCobAl1-a-b)O2 NCA、四元系などの複雑な化学組成を持つ物質全体にも適用できます。

内容

解砕

ACMパルベライザ ACM-HC

焼成により合成されたコバルト系材料は、粒子間のネック成長などで粒子径が大きくなり、

  1. 粒子内部からのリチウムイオンの出し入れが効率的に行えない
  2. 集電体のアルミ箔上に塗工した際に充填率が悪い
  3. 塗工面の凸凹が大きくなる

などの問題を持つため、平均径10〜30μmにまで粉砕する必要があります。

しかし、粉砕によって微粉が増えると流動性やスラリー粘度に悪影響が出るため、適切な粒子径分布を持つ粉体の作製が重要となります。

この解砕・粉砕の際に不純物(特に金属コンタミ)が正極活物質に含まれると短絡の発生や電気化学反応で電池が過熱し、燃焼する可能性もあるため不純物量を可能な限りゼロにすることが求められます。このため当社では、当用途の粉砕機には摩耗が極めて少ない超鋼の使用やセラミックス微粒子を金属部品表面に溶射して原料が金属と直接接触しない対策をとっています。

オールセラミックス部品を用いて完全に金属コンタミフリーを実現したのが粉接部完全セラミックス製の粉砕機ACMパルベライザ ACM-HCです。

ACM-30HCモデルは、200kg/h以上の処理能力とd50:8~10μmでありながら微粉量が非常に少なく、かつ最大径も100μm以下に抑える性能を有するため、正極材製造ラインで多く使われています。また、粉砕機だけではなく配管や集塵機でも金属コンタミを生じないシステムを提供します。

また、粉砕品の導電性向上や流動性改善のために、ノビルタで添加剤コーティングや、圧密化処理を行います。

ドライエア循環粉砕混合システムフロー

焼成品解砕例

ナノ粒子の合成

ナノクリエータ FCM-MINI

噴霧熱分解法を含む湿式法では、一次粒径がナノサイズの活物質合成方法が実用化されていますが、乾式では火炎法を応用した当社のナノクリエータなどが研究開発に使われています。

当装置は、原料溶液を火炎中に噴霧して瞬間的に燃焼させて酸化反応を起こし、ガスで急冷して酸化物ナノ粒子を合成します。

原料溶液を予め混合しておくことで多成分を同時に火炎中に噴霧し、複組成の化学種を合成します。多成分系金属酸化物は正極材の添加剤としても有効に用いられます。

表面処理

ノビルタ NOB-700

充放電容量やレート特性、サイクル特性、安全性、信頼性などの向上のため、活物質表面を異なる化学種で被覆する処理を行います。たとえば、導電助剤のカーボンブラック系材料を正極活物質上に固定化し、電池の内部抵抗を低減する手法は広く行われています。また、レート特性や温度安定性向上のため、最近ではセラミックスのレイヤーを活物質上に作成する手法やナノ粒子の表面に固定化する手法も取られます。

これらの処理は液相中でゾル-ゲル法、化学反応、吸着の後に焼成して行うため、乾燥工程が必要でエネルギーコスト、残留溶媒による品質への悪影響の問題があります。

ここでは乾式でナノ粒子などをサブミクロン~ミクロンサイズの粒子表面に固定化して被覆する技術を紹介します。

正極材の表面処理にはセラミックス仕様のノビルタが多く用いられます。LCOへのアセチレンブラック粒子の被覆やNCAへのアルミナナノ粒子の被覆、NMCへのアルミナナノ粒子の被覆、LiMn₁.₅Ni₀.₅O₄へのLiFePO₄の被覆などを行うことで、サイクル特性、見掛け密度上昇のみならず、次工程での必要溶剤量の減量効果が得られます。

粒子の評価

パウダテスタ PT-X

粉体プロセスと品質管理には粉体特性の評価が必須です。オンライン粒子径分布測定装置は、粉砕機や分級機と組み合わせて使用することで、製品粒子のリアルタイム品管理が可能です。

パウダテスタは測定者や測定方法によって大きく変動する粉体の流動性やタップ密度の定量評価に世界で標準機として使用されています。

そのため、他製造者から購入した原材料の品質チェックにも有効な上、製造中の粒子の状態評価による運転トラブルの防止や粉体最終製品の品質管理にも活用できます。

ペネトアナライザ PNT-N

その他、ペースト化工程や電解液との反応性で重要なぬれ性やぬれ速度を測定できるペネトアナライザも電池活物質の特性評価に使われます。

供給と製品回収、充填計量、作業環境保護

主となる粉砕機や混合機のほか、粒子の供給装置ファイントロン、粉砕微粉を空気と分離・回収する集塵機、粒子を計量しながら容器に充填するストット充填計量装置、人体に有害な粉塵から作業者や周辺環境を保護したり、クロスコンタミを防止して製品品質を保つケミカルハザード防止設備のセーフティブースなどの周辺機器も重要です。

このように個々のプロセス機器や設備だけでなく、炉や篩機などを含め、前後工程でのマテリアルバランスを考慮した電池材料製造工程を総合的に構築することが重要であり、当社はその提案・提供に強みを持ちます。

ご質問・ご相談はお気軽にお寄せください