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一つの発明が一地方の産業の隆盛に寄与

微粉砕機ミクロンミルは化粧品、医薬品、鉛粉、染料、顔料、塗料など様々な分野で使われました。中でも、日本各地に分布する石灰岩を粉砕して粉にした重質炭酸カルシウムの製造に広く使われました。ちなみに”重質”があるのであれば”軽質”もあるのでは、と思われた方は大正解です。それぞれ略して重炭、軽炭、と呼ばれますし、まとめて炭カル、と呼ばれることもあります。どちらの粉の製造においても、当社の機械をご利用いただいています。なお、これらの粉の用途や製法、両者の違いなどは日本石灰協会・日本石灰工業組合のウェブサイトをご覧ください。
さて重炭は何かに混ぜて使うことが多い材料です。そのため小さな粒子(微粉)にしないと混ぜにくく、使いにくくなってしまいます。その大きさは1mmの100分の1、つまり10μm(マイクロメートル)以下と非常に小さく、昭和の初めごろまでは、石灰石をここまで小さくすることは困難でした。例えば石灰石の主な産地の一つである中国地方、特に広島県・岡山県の山間部では、このような微粉の重炭を作るため、以下の工程を採用していました。

  1. 石灰石を山から掘り出して砕く
  2. 砕いた石灰石を、水の中でさらに細かく粉砕する(湿式粉砕)
  3. 水と微細な石灰石の混ざった液体を、重たい粒子と軽い(小さい)粒子に分ける
  4. 軽い粒子を液体ごと取り出す
  5. 乾燥させて10μm以下の粒子を得る
  6. このように、非常に手間とエネルギーを必要としていました。

しかしミクロンミルの登場によって、乾式、つまり水を使うことなく、大量の微粉を作ることができるようになりました。このことが業界に起こした衝撃はすさまじく、1931(昭和6)年~1941(昭和16)年にかけて、数百台の装置が納入され、中国地方に重炭工業のムーブメントが起こることになりました。